振袖喪服とは

【読み:ふりそでもふく】

山形県天童市では、葬儀のときに振袖に手を通します。黒喪服の人たちに交じって、振袖姿の華やかな女性が焼香をするのです。天童は山形県の中でも比較的雪が少なく果物の豊富なところです。町が小さく人の和を大切にするので、冠婚葬祭に関しては、皆の手で行う習慣が古くからあったそうです。とくに葬儀に関しては、全員が手を貸して「死」を盛大に祭ることで、人の命の尊さを若い人たちに教えるのが先輩のつとめだということです。そのためどんなに幼くても葬儀に必ず参加するのがしきたりです。裃を着た喪主、白喪服の喪主夫人、そして娘は振袖です。先頭に近親者が立ち、あとは黒紋付を着た参会者、道路わきにはその行列を見送る人が立ちます。行列の中の世話役さんが、見送る人たちに塩せんべいを配り、行列は自宅から寺まで続きます。行列の通り道の家の人たちは必ず外に出て、野辺送りをします。娘や孫の振袖は、人の目を受けながら歩くので、「ここにはこんないい娘がいますよ」という宣伝の意味もあるようです。またこの行列は酒を飲みながら歩き、寺に着くまでに飲みきっていないと不吉とされるそうです。昔の人は、葬儀を「晴の日」と考え、若い人を前面に出して社会の中の一員に加える儀式にしたようです。

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