南部染めとは

【読み:なんぶぞめ】

産地:岩手県盛岡市

地元民が復活させた伝統の染色技法。

古来、位の高い高貴な人にのみ許された紫色は、紫草の根で染めたものです。南部地方には鎌倉時代以前に伝えられたといいます。 茜草や紫草は、万葉の歌にしばしば登場します。しかし、それらを原料とする茜染めや紫根染めは、現在では岩手県の南部地方の一部にしか見られなくなりました。昔、鹿角地方には、茜草や紫草、媒染剤となるニシコリが豊富に自生していました。そのため染色が育まれたのです。昔ながらの秘伝の技法で染めるには、ニシコリ灰に120~130回も下染めしてから、本染めを10数回繰り返しますので、1枚の布が染め上がるまでに2年余りの歳月を要するといいます。そしてさらに1年タンスの中に寝かせて安定させるのです。

このような伝統技法は化学染料の進出によって絶滅の憂き目に遭いましたが、関係者の努力によって復活したのです。大正5年頃から復活への機運が起こり、昭和8年に設立された「草紫堂」によって研究が重ねられました。現在では伝統的なものに現代技術も取り入れながら製作されています。染色の美しさもさることながら、絞り模様にも特色があります。

南部地方の紫根染めは、やや赤みを帯びた紫色です。絞りのきものなどは、京鹿の子とはまた違った趣と品があります。帯も派手な錦織ではなく、古代裂(こだいぎれ)ふうのざっくりとしたしゃれ袋などがよいでしょう。

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