法衣とは

【読み:ほうえ】

仏教教団の僧尼が規定によって着用する衣服で、「僧服」、「法服(ほうぶく)」、「衣(ころも)」ともいいます。日本における狭義の「法衣」は、「褊衫(へんさん)」、「裙子(くんし)」のほかにも次のようなものがあります。①「袍裳(ほうも)」、「法服」などとよばれるもの。袍と裳の二部制のもので、奈良時代以来のものです。色は、白色、のちに、白色以外のものもありますが、無紋の鈍色(どんじき)といわれるものです。②「有襴縫腋(うらんほうえき)」[=裾に襴という横裂(ぎれ)をつけて、両脇のひだをとってわきを縫ったもの]で公家の朝服の衿を垂領(たりくび)にしたもの。主として平安時代に成立した裳付(もつけ)形式のものです。つまり、「裘代(きゅうたい)」、「素絹(そけん)」、「空袍(うつほ)」、「重衣(じゅうえ)」、「襲(かさね)」などがそれです。③「直綴(じきとつ)」とよばれる、衣(い)と裙(も)が連綴(れんてつ)された形式のもの。中でも付属具一切を具備した正式のものは、「道具衣(どうぐえ)」とよばれます。中国の宋代の仏教より伝来し、鎌倉時代の禅宗によって完成したものです。④日本の古代服装の面影を残す修験の「篠懸(すずかけ)」。形状は、直垂(ひたたれ)に近いものです。⑤時宗に用いられた裳なしの衣である「阿弥(網)衣(あみえ)」⑥黄檗(おうばく)宗に用いられる中国民代様式のもので、「褊衫」が上下で合わされ変形した姿となったもの。⑦明治時代初期に始められた小袖型の袖をつける略式の法衣で、「略衣」、「改良衣」、「布袍(ふほう)」などといわれるもの。⑧明治時代中期に始められた筒袖洋服形式のもので、「洋服布袍」、「従軍服」などといわれるものです。尼僧には、現在は主として、③の「直綴」形式が用いられていますが、当初は、「褊衫」、「裙子」が用いられ、平安時代には、「袿(うちき)」の様式も用いられていました。第二次世界大戦後創始された浄土真宗(真宗)などの有髪の婦人僧は、尼ではなく、一般の僧侶と同じ形式の法衣をつけています。

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