とは

【読み:ふき】

袷の着物や綿入れの袖口や裾の部分で、裏地を表に折り返して、表から少し見えるように仕立てた部分。ふき返しともいいます。表地の端の傷みや汚れを防ぐためや、おもりの役割などを担っていました。

かつては、ふきに綿を入れる「ふき綿仕立て」がありました。ふきに綿を入れて重みや厚みを持たせることで、裾がばたばたしなくなるという実用面の他にも、ふっくらと柔らかな美しいラインが出て、重厚な感じや着物の豪華さを引き立てます。このため、武家や富裕な商家の女性に好まれていました。ふきの分量は流行で変化もあり、江戸時代中期には1寸以上の幅や厚みを持つものもあったといいます。時代が下ると庶民にも広がり、明治~昭和初期にはふき綿入りの晴れ着も一般的になりましたが、現在は花嫁衣裳や舞台衣装などに残るのみです。

綿を入れないふきは、今でも袷の着物や綿入れの袖口や裾に見られます。袖口ふきは5厘(約0.2cm)、裾ふきは8厘(約0.3cm)前後です。紬類などは細めに仕上げ、留袖や振袖、訪問着などでは多少太目に仕上げる方が、高級感が出てバランスが良いようです。 表布からちょっぴりのぞいて見えるふきは、配色などにおいてのデザイン性も兼ね備えています。今も昔も変わらぬ、実用と装飾の両面を併せ持つ工夫といえましょう。

関連するキーワード

タグ「袷」に関連するワード

タグ「装飾」に関連するワード

タグ「裾」に関連するワード