黄八丈とは

【読み:きはちじょう】

黄八丈は八丈島特産の絹織物です。1977年に国の伝統的工芸品に指定され、1984年には山下めゆ氏が東京都の無形文化財にも指定されています。島に自生する植物で黄色、鳶色、黒色に染められた絹糸を用いて、手織りで縞模様や格子模様に織り上げられます。
特徴的な色は、八丈刈安(はちじょうかりやす)という植物から作られる黄色です。
暗褐色の鳶色が主体の「茶八丈」「鳶八丈」、黒色が主体の「黒八丈」などがありますが、黒八丈には同名の別の絹織物(五日市の伝統品に「黒八丈」という絹織物があります。)が存在するので混同されがちです。
黄八丈の起源は古く、織り始めの頃については明らかになっていません。室町時代には貢絹の記録があるとされ、江戸時代には将軍家の御用品として献上されています。「黄八丈」という名称は戦後に使われるようになったものということで、それ以前は「八丈絹」「丹後」と呼ばれていたといいます。
伊豆諸島では八丈島の他に三宅島でも独自の絹織物が製造されていて、三宅島のものは三宅丹後と呼ばれています。
「黄八丈」八丈刈安という草から染料を作ります。八丈刈安は形がフナに似ていることから「小鮒草」と呼ばれることもありますが、秋に刈り取り、乾燥させ、煮出して染液をつくって、黄色を染め出します。若いうちに刈り取ったものは青味がかった黄色に、老熟したものは赤味がかった黄色に染められると言われています。
「鳶八丈」クスノキ科のタブノキの生皮を剥いで作られる樺色の染料で染められます。剥いだ樹皮が赤くなるものを「くろた」、赤くならないものを「しろた」といい、くろたの方が染料としてよいとされます。しかし、くろたは樹齢30年以上の木からしか採れない、貴重な染料です。
「黒八丈」ブナ科のスダジイ、イタジイの樹皮を採り、乾燥させて染めに使います。これも樹齢30年以上の木から採れるものがよいとされ、さらに採取した樹皮は乾燥させて3年間寝かせてから使うものがよいといいます。草木染の後、鉄分を含む沼で1週間泥染めをする、とても手間のかかる貴重な染物です。
黄八丈の柄は黄色を主に、樺と黒の二色と白を加えた縞柄や格子縞で、それ以外の柄は織られていません。江戸時代から「平織」と「綾織」という決まった織り方をしていて、現在にも受け継がれています。平織りとは、経糸と緯糸が一本おきに交わる、最も基本的な織り方です。柄模様によって、「二くずし」「のげ」「べんけい」「ななこ」「三くずし」「千すじ」「万すじ」などの名称がついているといいます。綾織は「斜文織」ともいい、経緯の糸の渡し方により、斜めの方向にうねをつくる織り方です。平織り同様に、「めかご」「風通くずし」「たつみあや」「太郎左衛門」「市松」「菱綾」「杉綾」「まるまなこ」「よせあや」「片あや」「足高貴」 などの織りかたがあるそうです。

関連するキーワード

タグ「染料」に関連するワード

タグ「無形文化財」に関連するワード

タグ「縞柄」に関連するワード